第2話 キャバ嬢という仕事

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Saiko

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ユタカくんから紹介されたキャバクラで働き始めて約1ヶ月。
レギュラー出勤だとさらに時給を出すってことだったので、私は週5日休まず働いている。

私は時給4,000円で、そこにドリンクや同伴などのバックがプラスされていく。
また売上に応じて時給もアップするから、頑張れば頑張るほど稼げるシステムなんだ。

スーパーで働いていた時はいかに効率的にレジ打ちしても時給は変わらず900円。
もたもたと仕事をする他のバイトと同じ給料なのが納得いかなかった。
でもその点キャバクラは、自分の頑張りがそのままお給料につながる。
それが私にとって、とても居心地が良かった。

 

「あゆちゃん、同伴お疲れ様~!もう仕事は慣れたって感じ?」

陽気に話しかけてきた彼は、ボーイの園田さん。
私の担当で、いつも色々とアドバイスをくれる人だ。

「そうですね、おかげさまで。指名してくれる人も少しずつ増えてきましたし」
「またまた!ご謙遜を。今日は橋田さんと同伴だったんでしょ?新人さんとは思えないな~」

園田さんはかなりやり手のボーイで、私に本当に良くしてくれている。
体入時、ガチガチになっている私に色々と話しかけてくれて緊張をほぐしてくれた。
お客様の特徴や接客マナー、会話のコツなんかも詳しく教えてくれた。
私がキャバクラを嫌いにならなかったのも、園田さんのおかげと言っても過言ではない。

今日の同伴だって、実は園田さんがお客さんに口添えをしてくれたのを私は知ってる。
でもそんなことは一言も言わずに、すべて私の手柄にしてくれている。
本当にボーイの鏡だなぁ、と思う。

「同伴は大丈夫だった?」
「あ、はい。園田さんのアドバイス通り、野球の話を振ったら楽しそうにずっと話してくれました」
「良かった。あと橋田さんは子供の話もデレデレしながら話してくれるから、今度聞いてごらん」

こういうのを聞くと、園田さんが女の子だったら売れっ子キャバ嬢になれただろうなって思う。

「それとあゆちゃんさ……」
「あゆちゃーん!はやくフロア入ってくれる?お客様待ってるよー」

園田さんが私に何かを話そうとした瞬間、店長からの呼びかけが。
私はすぐ返事をして、園田さんに「すみません」と声をかけてフロアへ向かった。

 

「あゆちゃーん!またドレスになるとかわいいねぇ」

同伴でも豪快に飲んでいた橋田さんは、もう完全に出来上がっていた。

「あははーありがとうございます。橋田さんが青が好きって言ってたので、今日は青のドレスにしてみました」
「えーうれしいなぁ。すごく似合ってるよ~」

橋田さんはそう言うと、すかさず私の手を握って距離を詰めてきた。
さらに私の手を自分の顔に当てると

「やっぱり若い子の肌はいいね~スベスベだよ~」

と言いながら私の手をほっぺたで滑らせる。
顔の油が手にべっとりとつく感触……すごく気持ちが悪い。
でもその気持ちが顔に出ないように、口角は上げたままキープ。

「ありがとうございます~。そういえば橋田さん、お子様がいるって聞きましたよ。おいくつくらいなんですか?」

そう聞きながらさりげなく距離をとり、お酒を作り始める。
橋田さんも私の質問に気をとられ、特に違和感を持っていない様子だ。良かった。

「ん~~?今ね、大学生に入学したばかりだよ。本人は一人前のつもりでいるけど、まだまだ子供で困っちゃうよ」

大学入学ということは、今年で19歳……。私の1個下だ。
父親が自分と同い年の女の子にデレデレしてるなんて子供は知らないんだろうな。

その後もお酒を飲みながら、ひたすら子供トークを続けた。

「橋田さんのお子様なら、すごく頭が良さそう!」
「わ、これがお子様ですか?かわいい~!!」
「橋田さん、素敵なお父様でいらっしゃるんですね」

キャバクラの仕事はとにかくお客様を褒める。
どんな話題でも最後はお客様を褒める。
慣れてくるとけっこう単純作業だから、接客しながら他の事も考えられるようになる。

園田さんのアドバイス通りにしてれば本当に失敗はないな……
私の父親も、こんなおっさんみたいになってるのかな……
あぁ、早くユタカくんに会いたいな……

しゃべりながら、そんなことをぼんやりと考えていた。

 

つづきはこちら⇒第3話 お金を稼ぐ理由

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