第6話 山本さんとの出会い

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Saiko

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ユタカくんとの結婚資金を貯める。
そう決めてから、1ヶ月。
私はなんとか自分の指名客を確保しようと躍起になっていた。

園田さんは積極的に私をフリーのお客様に付けてくれたけど、なかなか成果が出ない。
場内指名をもらえたとしても、それっきり指名が返って来なかった。
「一緒にプライベートでご飯食べに行こう」というお誘いだけが無駄に増えた。

私の指名客は橋田さんくらいしかいなかったが、橋田さんも月1回来るかどうか。
他の女の子は指名客が来て、シャンパンがどんどん出ているのに。

正直、めちゃくちゃ焦っていた。
とにかく何かしなくちゃ。
そう思い、待機室で連絡先を交換した人にひたすらLINEを送っていた。

「あゆちゃん。仕事だよ」

園田さんに呼ばれ、私はスマホをポーチに仕舞い、待機室から出た。
結局、LINEの返事は誰からも来なかった。
今から付くフリー客も、きっと同じような感じなんだろう。
キャバクラを合コン会場と勘違いしてくる客ばかり。

「ほら、あゆちゃん!やる気のなさが顔に出てるよ。もっとシャキッとして!」

いつもなら目が醒める園田さんの言葉だが、今日はもやもやが晴れなかった。

案内された席へ行くと、サングラス姿の30歳くらいの男が座っていた。
うちの店で若い客はめずらしい。
そう思いながら、営業スマイルを浮かべながら「失礼します」と声をかけた。

「お、来たね」

隣に座ると、さっそく肩を組んで密着してくる男。
私は嫌だなと思ったが、キャバクラではよくあることだった。
その体勢のまま、私はお酒を作り始める。

「君、すごくかわいいじゃん。入ってどのくらい?」
「まだ2ヶ月ちょっとくらいですね」
「ふーん、指名客たくさんいる?」

その言葉に、お酒を作る私の手が止まった。
今の質問は、一番聞かれたくないことだった。

「……おーい、ボーイさーん」

いきなり、男がボーイを呼んだ。
その声に、私はハッとして男の顔を見た。

しまった、つまらない女だと思われた?
このままチェンジされてしまう……!

やってきたボーイは、運の悪いことに園田さんだった。

「お客様、どうなさいましたか?」

園田さんは心配そうにお客様と私の顔を交互に見ながら聞いた。
私は恥ずかしさと後ろめたさで、ついうつむいてしまう。

「あのさ、伝票切ってよ。この子指名で飲み直しするから」
「かしこまりました。ありがとうございます」

伝票を切る?飲み直し??
それって、つまり私のことを本指名してくれるってこと!?

あまりの急展開に、頭がついていかない私。
でも園田さんがグーサインしているのを見て、ようやく確信した。

「指名ありがとうございます。いきなりのことでビックリしちゃいました」
「そう?俺、気に入った子はすぐ指名するから。君の名前は?」
「申し遅れました。あゆといいます。お客様は……?」
「山本っていうの。よろしく」

これがのちに私の心に大きな爆弾を落とす、山本さんとの出会いだった。

 

つづきはこちら⇒第7話 シャンパンの落とし穴

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